最終更新日 2024年9月29日
記事の概要
今回の記事で説明する内容
今回の記事では知的財産権のうち、IT関連の企業が知っておく必要がある以下の項目を抜粋して記載しています。
今回紹介する上記6つの関係としては以下のようなイメージです。
この記事はこんな人にオススメ!
● 情報ITの観点で知的財産権を分かりやすく理解したい人!
● 知的財産権について理解し、ソフトウェアやデザインの知的財産を守りたい人!
● 法的リスク管理や知的財産権の遵守を徹底したい人!
● 情報安全確保支援士試験を受験する人!
知的財産権の理解の必要性
知的財産権はシステム開発を行っている会社にとって非常に重要であり、様々な形で関係してきます。
システム開発会社が知的財産権を正しく理解し管理することは、法的リスクの回避と競争力の維持に直結します。
例えば、システム開発ではオープンソースソフトウェアを利用することがよくありますが、
これらにはライセンスが付与されているため、その利用条件を順守する必要があります。
違反した場合、訴訟や賠償責任が発生する可能性があります。
システム開発会社にとって、知的財産権の適切な管理は、技術的な優位性を維持し、法的リスクを最小限に抑えるために不可欠です。また、クライアントやパートナーとの信頼関係を築く上でも、知的財産権を守る姿勢が重要となります。
知的財産権
知的財産権の概要
一言で簡単に言うと
知的財産権は、簡単に言うと、人々が作り出したアイデアや創作物(音楽、絵、発明、ブランドなど)を法的に守る権利です。
これにより、他人が無断でそれらを使ったり、真似したりすることを防ぎ、
作り手が自分の作品から利益を得られるようにするものです。
もう少し詳しく言うと
もう少し詳しく言うと、知的財産権とは、人間の知的活動によって生み出された創作物や発明、アイデアを法的に保護する一連の権利であり、無形の財産を他社の不正利用や模倣から守るための法的な枠組みです
知的財産権には、いくつかの異なる種類があり、それぞれ異なる対象を保護し、法的な手続きや保護期間が異なります。
代表的なものに、産業財産権(特許権、実用新案権など)や著作権、営業秘密などがあります。
主な種類は以下の通りです。
これらの権利を保有することで、権利者は他社が無断でそれらの創作物や技術を使用することを法的に制約し、
自らの経済的利益を守ることができます。
大項目 | 項目 | 内容 |
---|---|---|
産業財産権 | 特許権 | 新しい技術や発明を独占的に使用できる権利を一定期間(通常20年)保護する。 |
商標権 | 商品やサービスの名称やロゴなど、ブランドの識別標識を保護し、混同を避けるために他社の使用を制限する。 | |
意匠権 | 製品のデザインや形状など、外観上の創作を保護する。 | |
著作権 | 音楽、文学、映画、プログラムなどの創作物を保護し、創作者が無断で複製、配布されるのを防ぐ。 | |
営業秘密 | 公開されていない技術やビジネス情報を保護し、不正な取得や使用を防ぐ。 |
産業財産権の概要
一言で簡単に言うと
産業財産権は、簡単に言うと、ビジネスに関するアイデアや発明、デザイン、ブランドを守るための法律的な権利です。
もう少し詳しく言うと
もう少し詳しく言うと、産業財産権とは、産業活動において生み出される技術的な発明やデザイン、ブランド名や商標などの無形財産を法的に保護するための権利の総称です。
他の人が勝手にそのアイデアや成果を使ったり、真似したりするのを防ぐために設けられています。
この権利には、特許、商標、デザインの保護などが含まれ、これにより、企業や個人が自分の技術やブランドを守り、利益を得られるようにします。
そのため、他社の知的成果を無断で使用したり、模倣したりすることを防ぎ、権利者がその知的成果を独占的に使用、利用できるようになります。
産業財産権には主に次の4つが含まれます。
権利 | 項目 | 説明 |
---|---|---|
特許権 | 概要 | 新しい発明や技術アイデアを保護するための権利。 発明者は一定期間、その発明を極撰的に使用する権利を持ちます。 |
保護対象 | 新しい発明や技術的アイデア。 | |
保護期間 | 出願日から20年間。 | |
具体例 | 新しいセキュリティアルゴリズムやデータベース管理技術の発明。 例えば、システム開発において画期的な暗号化技術やデータ管理方法を発明した場合、その技術は特許権によって保護されます。これにより、他社が無断でその技術を使うことを防ぎ、発明者が20年間独占的に利用できます。 |
|
実用新案権 | 概要 | 特許権に似ていますが、より小規模で技術的な改良や新しいアイデアを保護します。 特許よりも簡便な手続きで権利を得られ、短期間の保護が特徴です。 |
保護対象 | 簡単な技術的改良や工業製品の改善。 | |
保護期間 | 出願日から10年。 | |
具体例 | ソフトウェア開発におけるユーザインタフェースの改良や、システム運用効率を高める小規模な術の改善。 例えば、既存のIT管理ツールに小さな改良を加え、より使いやすくする新しい機能やインタフェースの改善が実用新案権で保護されます。 これにより、他社が同じ技術を無断で使用することを10年防ぎます。 |
|
意匠権 | 概要 | 工業製品や製品デザインの形状や外観を保護します。 他者が同じデザインを模倣して使用することを防ぎます。 |
保護対象 | 製品の形状やデザイン | |
保護期間 | 25年(登録日から、2020年以降の出願は25年、それ以前は20年)。 | |
具体例 | アプリケーションやソフトウェアの独自なデザインや、UI/UX設計。 例えば、システム開発会社が提供するソフトウェアの画面レイアウトや操作デザインが独特で、ユーザにとって重要な要素であればそのデザインが意匠権によって保護されます。 これにより、他者がそのデザインを模倣することを25年間防ぐことができます。 |
|
商標権 | 概要 | 商品やサービスの名前やロゴ、シンボルを保護します。 商標権により、他者が同じ名前やログを使用して顧客を混乱させることを防ぎます。 |
保護対象 | 商品やサービスの名前、ロゴ、シンボル。 | |
保護期間 | 10年(更新可能、更新すれば無期限)。 | |
具体例 | ソフトウェア製品名や開発したシステムのブランド名、ロゴ。 例えば、システム開発企業が開発したITソリューションの名称やそのシステムのロゴデザインは商標権で保護されます。 これにより、他者が同じ名前やロゴを使って市場で混乱を引き起こすことを防ぎ、10年間(更新すれば無期限)そのブランドを保護できます。 |
システム開発やSIer企業にとって、特許権や実用新案権は新しい技術的なアイデアや改良を守り、
意匠権はソフトウェアやアプリケーションのデザインを保護します。
商標権は製品やサービスのブランドを守るため、競争力を高め、知的財産の保護を通じて市場での優位性を確保できます。
著作権の概要
一言で簡単に言うと
著作権は、簡単に言うと本や音楽、映画、社員、ソフトウェアなどの創作物を守るための権利です。
もう少し詳しく言うと
もう少し詳しく言うと、著作権は、創作された著作物(文学、音楽、映画、ソフトウェアなど)に対して自動的に付与される法的権利であり、その著作物を複製、配布、改変、公表、展示、演奏するなどの行為をコントロールできる独占的な権利を指します。
著作権は作品が創作された時点で自動で気に発生し、登録や届け出は不要です。
著作権によって作者は自分の作品を他人に勝手に使われたり、コピーされたりするのを防ぎ、自分だけがその作品を使うかどうか決めることができます。
保護期間は、作者の生きている間と死後70年まで続きます。
著作権は以下のように3つの権利で構成されています。
権利 | 項目 | 説明 |
---|---|---|
財産権 | 著作物の商業的な利用を管理するための権利であり、以下のような権利が含まれます。 | |
複製権 | 著作物を複製(コピー)する権利。 | |
公衆送信権 | インターネットやテレビ放送を通じて、著作物を配信、放送する権利。 | |
展示権 | 著作物(絵画や写真など)を展示する権利。 | |
譲渡権・貸与権 | 著作物を販売したり、貸し出したりする権利(本やCD、ソフトウェアなど)。 | |
翻訳権・翻案権 | 著作物を翻訳したり、他の形式に作り変える(映画化や小説化する)権利。 | |
人格権 | 著作者の人格的な利益を守るための権利であり、他人が著作物を改変したり、創作者の意思に反する形で利用するのを防ぐための権利。 | |
公表権 | 著作物を公にするかどうかを決定する権利。 | |
氏名表示権 | 著作物に著作者の名前を表示するかどうかを決定する権利。 | |
同一性保持権 | 著作物の内容を無断で変更されたり、歪曲されたりしない権利。 | |
著作隣接権 | 著作隣接権は、著作物の創作者ではなく、その著作物を実演、放送、録音、配信する人の権利です。 これらの権利は、実演者や創作側が作品の利用から適切な対価を得るために重要な役割を果たします。 |
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実演家 | 歌手が他人の曲を歌った場合、その実演に対する以下の権利が発生します。 ・実演の録音、録画の権利 ・実演を放送、配信する権利。 ・実演を複製する権利。 ※保護期間は実演が行われた年の翌年から 70年です。 |
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レコード製作者 | レコード会社が音楽を録音し、CDを制作した場合以下の権利が発生します。 ・レコードの複製権や貸与権。 ・公の場でその音源を使用する際の報酬を請求する権利。 ※保護期間は録音が行われた年の翌年から 70年です。 |
|
放送事業者(テレビ局やラジオ局) | テレビ局が番組を放送する際、その番組について以下の権利が発生します。 ・番組の再放送や、インターネットでの配信をコントロールする権利。 ※保護期間は放送が行われた年の翌年から 50年です。 |
|
有線放送事業者(ケーブルテレビなど) | 有線放送の再送信をコントロールする権利を持ちます。 |
著作権法の侵害に当たらないケース
システム開発会社やSIer(システムインテグレーター)に関係するという観点から、
著作権法上問題がない行為の具体例をいくつか挙げます。
これらの行為は、法律やライセンスを遵守しているため、著作権を侵害するリスクがないと考えられます。
著作権の帰属
著作権法における権限の帰属について、情報技術に関連する内容を以下にまとめました。
著作権の帰属について、「職務著作」「委託開発」「ライセンス契約」を図解すると以下のようになります。
不正競争防止法
一言で簡単に言うと
不正競争防止法は、簡単に言うと、企業間の不正なやり方での競争を防ぐための法律です。
もう少し詳しく言うと
もう少し詳しく言うと、不正競争防止法とは、企業が競争市場において不正な手段で利益を得る行為を防止し、健全な競争を維持するための法律です。
主な目的は、他者の商品やサービスの信用や利益を不当に奪う行為を規制し、知的財産権や営業秘密を保護することです。
他者の商品を寝たり、営業秘密を盗んだり、虚偽の表示をして消費者を騙すことを禁止しています。
また、他者のブランドやデザインを悪用することや、ドメイン名を不正に取得することも禁止しています。
これにより、企業が公正に競争し、消費者が正しい情報に基づいて商品やサービスを選べるように保護しています。
身近なものの事例!
不正競争防止法で身近な事例としては以下のような事例があります。
1. 商品やブランドの模倣(混同惹起行為)
例えば、コンビニで有名ブランドのコーヒーとそっくりなデザインの安価なコーヒーが並んでいるとします。
有名ブランドに似せたパッケージを作り、消費者に「本物かもしれない」と思わせて購入させるのは不正競争防止法違反です。
2. 営業秘密の不正取得・使用
例えば、飲食店Aの従業員が退職後、競合店Bに就職し、Aの秘伝のレシピをBに渡して使うとします。
秘伝のレシピなどの営業秘密を持ち出し、競合店で利用することは、営業秘密の不正利用として不正競争防止法で禁止されています。
3. 虚偽の表示による誤認誘引
例えば、ネットショッピングサイトで「日本製」と書かれているが、実際には海外で製造された商品があるとします。
消費者が品質を信頼して購入する場合、実際と異なる原産地表示は虚偽表示として違法です。
4. ドメイン名の不正取得
例えば、有名ブランド「Nike」のドメイン名(nike-shop.com)を無関係な人が取得し、その後、Nikeに高額で売ろうとしているとします。
他社のブランド名に似たドメイン名を悪用して、混乱を招いたり、利益を得ようとするのは違法です。
5. 誇張した広告(不正な比較広告)
例えば、A社が「うちの掃除機はB社の製品より3倍吸引力が強い!」と、根拠のない比較広告をするとします。
科学的な根拠なしに競合商品と自社商品を不正に比較して、誇張した広告を出すことは、不正競争防止法で禁止されています。
6. 著名なブランドの不正利用(著名表示の不正使用)
例えば、街の小さなカフェが、スターバックスのロゴに似たデザインを使ってお店を装飾するとします。
有名ブランドの名前やロゴを無断で使用し、消費者を誤解させることは不正競争にあたります。
トレードシークレット
トレードシークレットは、不正競争防止法で保護されている営業秘密のことです。
不正競争防止法では、企業の重要な情報をトレードシークレットとして保護しています。
トレードシークレットは企業の競争力を維持するために必要不可欠な情報であり、
法律により不正取得や無断使用から保護されています。
トレードシークレット(営業秘密)として保護される要件
不正競争防止法では、次の3つの要件を満たす情報が営業秘密として保護されます。
要件 | 説明 |
---|---|
秘密管理性 | その情報が企業内で秘密として管理されていることが必要です。 例:パスワード保護されたデータ、秘密保持契約(NDA)を結んだ従業員のみにアクセスを許可している情報。 |
有用性 | その情報が企業にとって経済的・事業的な価値を持っていること。 つまり、企業の利益を増加させたり、競争力を高めるために有効な情報であることが必要です。 例:製品の開発技術、マーケティング戦略、顧客リスト、仕入れルート、製造プロセス。 |
非公知性 | 一般的に公開されていない情報であることが必要です。 すでに公に知られている情報は営業秘密とは認められません。 例:公にアクセスできる情報ではなく、社内や特定の契約者間でのみ共有されている情報。 |
限定提供データ
限定提供データとは、2018年の改正不正競争防止法で新たに導入された概念で、
不特定多数には公開されずに、特定の者に対して限られた範囲で提供されるデータを指します。
具体的には、営業秘密のような厳重な秘密管理がされているわけではないが、一定の条件下で提供されるデータが
不正に取得、利用された場合に保護されるデータです。
限定提供データとして保護される要件
不正競争防止法上では、限定提供データは以下の条件を満たすデータとして定義されています。
要件 | 説明 |
---|---|
電磁的方式(電子データ)で管理されている事 | データが電子的に保存・管理されている必要があります。 例:データベースやクラウドサービスで保存されているデータ。 |
不特定多数には提供されていないこと。 | このデータは誰にでも自由にアクセスできるものではなく、限られた人や組織にしか提供されていないものです。 例:特定の顧客や取引先にのみアクセスが許可されているデータ。 |
取引上の対価を伴って提供されていること。 | データが商業的な取引の一部として提供されているものであり、無料で広く公開されているものではないこと。 例:データベースの利用権を有料で販売する場合。 |
ゴリタン
インフラエンジニアとして、ネットワークとサーバーの運用・保守・構築・設計に幅広く携わり、
現在は大規模政府公共データの移行プロジェクトを担当。
CCNPやLPICレベル3、AWSセキュリティスペシャリストなどの資格を保有しています。