後輩エンジニアに「公開鍵暗号方式」を理解させるための指導手順とは?私が実際に現場で教えている方法を公開!

最終更新日 2024年11月11日

今回の記事では当方が現場で実践している、公開鍵暗号方式の指導方法を紹介します。

公開鍵暗号方式指導方法。ゴリタンが現場で実践している指導方法を紹介します。
公開鍵暗号方式指導方法

身近でよく使われているのに現場の若いエンジニアは公開鍵暗号方式をよくわかっていない?

公開鍵暗号化方式は身近な場面でたくさん使用されていますが、どのような方式なのかエンジニアでもちゃんと理解している人は少ないようです。

例えば、ウェブサイトの通信である「https」やログイン認証等、様々な場面で使用されています。
そのため、エンジニアとして働いていると至るところでこの公開鍵暗号化方式に遭遇します。

しかし、一般の人はおろか、エンジニアとしては働いている人でもなかなか公開鍵暗号化方式についてちゃんと理解している人はなかなかいません。

X(Twitter)では以下のような投稿がされており、公開鍵暗号化方式についての理解が出来ない人が多いことが伺えます。

公開鍵暗号方式は意外とシンプル!一度理解すれば簡単。公開鍵暗号方式は一見難しく感じるかもしれませんが、一度理解すると「こんなにシンプルだったのか!」と思える仕組みです。

この方式は、自分だけが解読できるようにデータを暗号化してもらう仕組みです。確かに公開鍵や秘密鍵といった用語が出てきますが、一度仕組みを理解すれば意外と簡単に感じられます。
公開鍵暗号方式は意外とシンプル!一度理解すれば簡単

公開鍵暗号方式について理解すると他の概念も理解できる!

公開鍵暗号化方式について理解することで、デジタル署名など他の概念も理解できるようになります。

なぜなら、公開鍵暗号化方式の考え方を基礎として、他の様々な仕組みに組み込まれているからです。

例えば、認証の仕組みで言うと、公開鍵暗号化方式の暗号化の仕組みである公開鍵と秘密鍵が1対であることを応用して、本人確認(秘密鍵で解読できること=本人であることの証明)として利用したりしています。

このように上位概念の理解に繋げることができるため、公開鍵暗号化方式の概念の理解は必須です!

共通鍵暗号暗号方式を理解するとブロックチェーンや共通鍵暗号方式、デジタル署名の概念が理解できる。
公開鍵暗号方式理解による学習効果

現場の後輩エンジニアに公開鍵暗号方式を教える際実践している指導手順

私が現場の後輩エンジニアに公開鍵暗号化方式について指導や解説するときは、大きく分けて5つのステップで指導を実践しています。

  1. テーマと説明の流れ
  2. 概要
  3. 暗号化の流れ
  4. 鍵の数
  5. アルゴリズム
  6. 利用場面

説明の流れを項目ごとにブレークダウンして段階的に詳細化したものが以下になります。

公開鍵暗号化方式指導手順の全体像
公開鍵暗号化方式指導手順の全体像

実際に説明する前に、このように説明の流れを図にしてまとめ、話の流れ、構造を理解しておくとよいと思います。

なぜなら、説明の流れを視覚的に頭にインプットすることで説明しやすくなるからです。
人は、どのように説明するか思い出す際、文章(言語情報)で思い出すよりも、図(視覚情報)に整理して思い出す方が速く正確に思い出すことができます。

例えば、目的地への行き方を覚えるとも、「スクランブル交差点を右に曲がって、その先の病院を左に曲がって、次にラーメン屋をまっすぐ行って」と言語情報で覚えるよりも、実際に行って見た視覚情報で覚えた方が早く正確ですよね。

そのため、説明の流れを頭に入れるときはなるべく上記のように図にして頭に入れるようにしましょう。

テーマと説明の流れ

公開鍵暗号化方式について説明する際、まず最初に説明するテーマと、どのような順序で説明するか、説明時のタイトル単位で説明の流れを聞き手に話しましょう。

以下のような形で図を使って説明できるとベターです。

説明の流れのイメージ図
説明の流れのイメージ図



最初にテーマと説明の流れを話し、説明の全体像を聞き手にインプットすることで、その後に解説した詳細情報をタイトルごとに関連付けしやすくなり、結果、聞き手が理解しやすくなります。

特に、公開鍵暗号化方式のように少し複雑な内容を説明するときは、聞き手が理解しやすいよう説明の流れを丁寧に伝えましょう。

例えば、今回説明するアルゴリズム(以下の画像の赤枠部分)について説明する場合、「これから暗号化の流れについて話します。暗号化の流れは全部で7つのステップあり、アルゴリズムの選択はその2つ目のステップです」と説明すれば、聞き手は、今は暗号化の流れの話で、今の解説は7ステップのうち2つ目のステップの話をしているんだと、説明内容を関連付けながら整理して理解できます。

しかし、説明の流れをちゃんと説明していないと、今どの話をしているのかわからず、迷子になってしまいます。

このため、公開鍵暗号化方式のような少し複雑な内容を説明する際は、まず、説明する順序を説明しましょう!

私はいつも以下のように説明しています。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

今回は5つの観点で公開鍵暗号化方式について解説します。
1つ目が「概要」、2つ目が「暗号化の流れ」、3つ目に「鍵の数」、4つ目に「アルゴリズム」、最後に5つ目「身近な利用場」です。

説明を聞くときは共通鍵暗号化方式と比較しながら聞くと公開鍵暗号化方式の特徴をより理解できます。

概要の説明

まず最初に共通鍵暗号化方式について概要を以下の4つの観点で説明しましょう。

  1. 説明の流れ
  2. 一言で説明
  3. 概要
  4. 特徴
  5. 具体例

ちなみに、概要部分の説明は以下指導手順全体像の赤枠部分です。

公開鍵暗号化方式指導手順全体像の概要部分
公開鍵暗号化方式指導手順全体像の概要部分

<説明の流れ>

まずは、概要について何を話すのか簡単に説明しましょう。
その際、いくつの観点で説明するのか聞き手にインプットしましょう。


事前にこれから説明する内容の構造を示すことで、聞き手が頭の中で枠組みを作りやすくなり、話を聞いている途中で迷子になりづらくなります。

また、人の記憶は数やリスト形式で整理された情報を覚えやすい傾向にあります。そのため、「●個の観点」などと構造を示すことで、相手の記憶に残りやすくなります。

私はいつも以下のように説明しています

先輩エンジニア
先輩エンジニア

概要の説明は4つのステップで説明します。

1つ目に「公開鍵暗号化方式を一言で説明するとどんなものか」、2つ目に「概要」、3つ目に「特徴」、4つ目に「実際の利用場面」です。

まずは、公開鍵暗号化方式についてざっくりと概要を理解して、徐々に理解を深めていきましょう!


<一言で説明>

説明の流れについて聞き手にインプットさせたら、実際に公開鍵暗号化方式の概要について解説していきましょう。

まずは、一言で簡潔になるべく分かりやすく説明します。
公開鍵暗号化方式について大まかな意味を理解してもらうことが目的です。
br>いきなり詳細の内容を解説すると情報量が多くなってしまうので、まずは概要レベルで説明するのがコツです。

私はいつも以下のように説明しています。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

公開鍵暗号化方式を一言で言うと、「暗号化用の公開鍵と、復号用の秘密鍵の2種類を使用してデータを安全にやり取りする仕組み」です。

上記のように説明し、公開鍵暗号化方式は「公開鍵」「秘密鍵」の2種類を使うということを伝えます。

すると「公開鍵ってなんだろう?」と聞き手は疑問に思います。
そこで、次の「概要」の項目で「公開鍵」「秘密鍵」について解説しましょう。

<概要>

概要部分では、「公開鍵」「秘密鍵」とはどんなものか、何のためにあるのか補足しながら説明しましょう。

目的を説明しないと、ただ意味を暗記するような形になってしまいます。

何のためにあるのか理解することで、「公開鍵」「秘密鍵」が公開鍵暗号化方式において、どのような意義があるのか、どのような位置づけなのか、どのように関連していくのか等、様々な観点で考えることができます。結果、多面的に理解できるようになり、より深い理解につながります。

例えば、秘密鍵でデータを解読できることは、本人であることの証明になりますが、これはなぜ証明になるのか疑問に思ったときに、公開鍵と秘密鍵は一対であることを理解していれば自分で考えて答えを導き理解を深めることができます。
しかし、ただ意味を暗記しているだけだと、答えを自分なりに思考して導くことは出来ません。

そのため、目的はちゃんと聞き手に抑えてもらえるように説明しましょう。

私はいつも以下のように説明しています。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

先ほど公開鍵暗号化方式は「公開鍵」「秘密鍵」の2種類の鍵を使用してい安全に通信する仕組みと解説しましたが、この「公開鍵」「秘密鍵」について説明します。

「公開鍵」とは、相手にデータを送る際、データを暗号化するために使う鍵です。
この鍵は誰に見せても構いません。
例えば、Amazonなどの宅配ボックスは、ボックスと南京錠を用意しておくと、配達人が荷物を宅配ボックスに入れて、鍵をかけてくれますよね。この鍵が「公開鍵」のようなものです。配達人は鍵をかけることは出来ますが、パスワードは知らないので、開けることができません。

一方「秘密鍵」とは、自分だけが持っている鍵で、暗号化されたデータを解読するために使用します。つまり、先ほどの例で紹介した、宅配ボックスを開ける鍵がこの「秘密鍵」です。

公開鍵で暗号化された情報は、この秘密鍵がなければ読むことが出来ないので、送られた情報は自分だけが安全に見ることができます。

公開鍵暗号方式のイメージ説明の例
公開鍵暗号方式のイメージ説明図の例

<特徴>

次に公開鍵暗号化方式の特徴を説明しましょう。
公開鍵暗号化方式ならではの特徴が浮き彫りになるので共通鍵暗号化方式と比較しながら説明するとよいと思います。

私は特徴を説明する際は下記の2つの観点を取り上げて説明しています。

・公開鍵暗号化方式は処理に時間がかかること
・1組の鍵で複数の相手と暗号化通信が可能であること
※上記の2つはいづれも共通鍵暗号化方式と比較した時の特徴です。

私はいつも以下のように説明しています。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

公開鍵暗号化方式の特徴について2つの観点で説明します。
1つ目は「処理時間」、2つ目は「通信相手ごとに必要な鍵の数」です。

まず、1つ名の「処理時間」について説明します。
公開鍵暗号化方式を使うと、情報を暗号化(見えない形にすること)する際に非常に多くの計算が必要になります。このため、計算スピードが遅くなり、処理に時間がかかります。
例えば、インターネット上でデータを暗号化するために公開鍵暗号化方式を使うと、計算の負担が大きく、暗号化や複合に時間が掛かります。

一般的には、公開鍵暗号化方式は共通鍵暗号化方式に比べて処理速度が数十倍から数千倍遅いとされています。

2つ目に「通信相手ごとに必要な鍵の数」についてです。
公開鍵暗号化方式は1組の鍵で複数の相手と通信が可能なため、必要になる鍵の数がすくなく、鍵の管理が比較的楽であるメリットがあります。
この「1組の鍵」というのは、公開鍵と秘密鍵のペアのことです。公開鍵は誰にでも配ることができるので、同じ公開鍵を使って複数の相手から暗号化されたデータを受け取ることが可能です。これにより、一つの鍵ペアで多くの相手と安全にやりとりすることが可能になります。

まとめると、公開鍵暗号化方式は安全に情報をやりとりできるメリットがありますが、計算の負担が大きく、処理が遅くなることもあります。それでも公開鍵を誰にでも配れるおかげで、1組の鍵でたくさんの人と同時にやりとりが可能である点が便利です。

<具体例>

次に公開鍵暗号化方式の身近な利用場面について紹介しましょう。

身近な利用場面を紹介することで、公開鍵暗号化方式について直観的に理解することができます。
自分の身の回りの例と関連付けて理解することで、すでにある既存の知識に、今回説明していることを紐づけて、関連付けて理解することができます。

私は、身近な利用場面として、ウェブサイトのセキュリティや、https通信、メッセージアプリ等を取り上げて説明することが多いです。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

公開鍵暗号化方式は身近な利用場面として、ウェブサイトの通信や、メッセージアプリで利用されています。

例えば、インターネットでショッピングをする時や銀行のサイトにログインする時、ウェブサイトのアドレスバーに「鍵マーク🔒」が表示されることがあります。
この「鍵マーク」は、公開鍵暗号化方式を使った安全な通信が行われていることを示しています。

また、メッセージアプリでも公開鍵暗号化方式が使用されており、WhatsAppやLINEなどのメッセージアプリでも、公開鍵暗号化方式が使われています。
これらのアプリでは「エンドツーエンド暗号化」(相手と自分の間の全ての通信が暗号化される仕組み)が使われており、第三者がメッセージの内容を盗み見ることを防いでいます。

各ユーザーが「公開鍵」と「秘密鍵」を持っており、友達にメッセージを送るとき、その友達の公開鍵を使ってメッセージを暗号化します。
そのメッセージは友達だけが持っている秘密鍵で復号可能なので、たとえ途中で誰かがメッセージを盗んでも、暗号化されているので内容を読むことができません。

「鍵マーク🔒」については実際の画像を以下のような形でくり抜いて聞き手に見せてあげられるとなお良いです!

https通信で通信が暗号化されている証拠
https通信で通信が暗号化されている証拠
https通信で通信が暗号化されている証拠
https通信で通信が暗号化されている証拠2

暗号化の流れ

次は実際に暗号化の流れについて説明しましょう。

暗号化の流れは公開鍵暗号化方式指導手順全体像の以下赤枠部分です。

公開鍵暗号化方式指導手順全体像の暗号化の流れ部分
公開鍵暗号化方式指導手順全体像の暗号化の流れ部分

<説明の流れ>

公開鍵暗号化方式の暗号化までの流れは少しステップが多いので、暗号化の流れについて解説する前に、説明の流れを聞き手にインプットしましょう。

説明の流れを聞き手にインプットすることで、聞き手は今後の展開を予想しながら説明を聞くことができます。

また、暗号化の流れについては、説明図を用意して説明することをお勧めします。

暗号化のステップが少し多いため、説明図を用意し、聞き手の理解を手助けしてあげましょう。
図を用意して解説することで、聞き手は視覚的に理解することができ、記憶に定着しやすくなります。以下のような図を用意すると良いでしょう!

暗号化の流れ説明図のイメージ
暗号化の流れの説明図のイメージ

例えば、野球のグローブを思い出すときに文字で「野球の「グローブ」は、野手(選手)がボールをキャッチするために使う特別な手袋のことです。」と思い出すよりも、グローブを頭の中でイメージした方が分かりやすいですよね。

このように、視覚的に説明することは聞き手の理解を助けるため、複雑な内容を説明するときは出来れば解説図を用意して説明しましょう!

私は普段、公開鍵暗号化方式について説明するときは以下の手順で実践しています。

  1. 乱数の生成
  2. アルゴリズムの選択
  3. 鍵ペアの生成
  4. 公開鍵の配布
  5. メッセージ暗号化
  6. メッセージ復号
  7. 共通鍵の生成と共有
先輩エンジニア
先輩エンジニア

公開鍵暗号化方式の暗号化までの流れは7つのステップで実施されます。

まず1つ目に「乱数の生成」、2つ目に「アルゴリズムの選択」、3つ目に「鍵ペアの生成」、4つ目に「公開鍵の配布」、5つ目に「メッセージ暗号化」、6つ目に「メッセージ復号」、最後7つ目に「共通鍵の生成と共有」です。

最後に共通鍵に関するステップが入っていますが、こちらについては後程説明していきます。

<乱数の生成>

鍵ペア作成の材料となる乱数の作成について説明する際、何のために乱数を生成するのか、なぜ乱数を使うのかを明確に伝えましょう。

私はいつも以下のように説明しています。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

まず最初のステップで「乱数」を生成します。

「乱数」とは全く予想が出来ない数値のことで、システムによってランダムに作成される数字のことです。

この「乱数」を材料に、公開鍵、秘密鍵を作成します。
「乱数」のような規則性のないランダムな数値は、推測されにくいため、この値をもとに公開鍵、秘密鍵を作成すれば、鍵の漏洩のリスクが減らすことができます。

「乱数」ではなく、通信をする人の生年月日などをもとに公開鍵、秘密鍵を作成したら危なそうですよね。生年月日よりも無意味なランダムな値を使用して作成した方が安全です。

Excelでも「RAND関数」を使用すると以下のように乱数を作成できます。興味がある方はやってみてください。

Excelでの乱数の生成
Excelでの乱数の生成

<アルゴリズムの選択>

実際に公開鍵、秘密鍵を作成する手順を決める「アルゴリズムの選択」について解説しましょう。
アルゴリズムを選択する目的は「公開鍵・秘密鍵を作成するため」です。この点を聞き手に抑えてもらいましょう。

私はいつも以下のように説明しています。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

次に通信相手双方で、複数のアルゴリズムの中から、使用するアルゴリズムを選択します。

「アルゴリズムの選択」の目的はそのアルゴリズムを使用して「公開鍵・秘密鍵を作成するため」です。

選択したアルゴリズムを使用して「公開鍵・秘密鍵」を作成します。
そのため、選択できるアルゴリズムの数だけ、作成する「公開鍵・秘密鍵」のタイプを選べるということです。

公開鍵暗号化方式では例えば、「RSA」「ECC」「DSA」などのアルゴリズムが一般的に利用可能です。

<鍵ペアの生成>

次は実際に「鍵ペア」作成のステップについて解説しましょう。

この時の説明のポイントは、公開鍵と秘密鍵は1対になっており、公開鍵で暗号化されたデータは、対になっている秘密鍵でしか復号出来ないことを強調して説明しましょう。

公開鍵暗号化方式では、対になっている秘密鍵でしか復号できないという部分が説明の肝です。
一番重要と言っても過言ではないので丁寧に説明しましょう。

私はいつも以下のように説明しています。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

次は実際に「公開鍵」「秘密鍵」を作成します。
この時、作成した「公開鍵」「秘密鍵」はペアになっており、このペアのことをKeyペアと呼びます。

Keyペアは事前に作成した「乱数」を使用し、選択したアルゴリズムを使用してKeyペアを作成します。

この時作成したKeyペアは1対1の関係になっています。
例えば、乱数とアルゴリズムで公開鍵A、秘密鍵Aを作成した場合、公開鍵Aで暗号化されたデータは秘密鍵Aでしか解読できません。公開鍵Aと秘密鍵Aは数学的に関連しており、1対の関係にあるためです。公開鍵Aで暗号化されたデータを別のタイミングで作成した秘密鍵Bで復号は出来ません。

また、公開鍵Aから秘密鍵Aを作成したり予測したりすることもできません。

<公開鍵の配布>

次は公開鍵の配布について説明しましょう。

公開鍵暗号方式では、作った公開鍵を通信相手に送り、その公開鍵を使って送ってもらったデータを暗号化してもらいます。

そのため、まずは公開鍵に渡すことを伝えましょう。

私はいつも以下のように説明しています。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

次は作成した公開鍵を暗号化通信を行いたい相手に渡します.
この公開鍵を使って相手が送ってくる通信データを暗号化してもらうためです。

公開鍵を相手に送る時点ではまだ通信データは暗号化されていませんが、公開鍵はデータを暗号化する専用の鍵なので例え通信データを盗聴されていたとしても問題ありません。

公開鍵は場合によっては公に公開している場合もあるので、その意味でも公開しても問題ないことがわかりますね。

<メッセージ暗号化>

次は実際にデータを暗号化するステップを説明しましょう。データを暗号化する際は相手から受け取った公開鍵を使用して暗号化しますのでその内容を説明しましょう。

以下のようにシンプルに説明しましょう。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

次は実際に相手から受け取った公開鍵でデータを暗号化します。ここからやっと通信データが暗号化されます。

<メッセージ復号>

次に送られたデータを解読するステップについて簡単に説明しましょう。
この時、相手が暗号化の際に使った公開鍵と対になっている秘密鍵で解読する必要があることもあわせて伝えましょう。

私は以下のように説明しています。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

次は相手から送られてきた暗号化されてデータを解読します。
この時に使用する秘密鍵は、通信相手が暗号化に使用した公開鍵と対になっている秘密鍵です。この秘密鍵でないと解読できません。

余力があれば、上記までの「乱数の生成」から「暗号化通信」までの流れはについて、一旦イラスト等を用いておさらいしましょう!

以下のようなイラスト図を想定しています。

公開鍵暗号方式の乱数生成から暗号化通信開始までの流れ図
公開鍵暗号方式での暗号化通信開始までのイメージ図

<共通鍵の生成と共有>

最後に余力があれば、一般的には公開鍵暗号方式は共通鍵を安全に交換するために使用されることについて解説しましょう。その際、なぜそのような使い方がされるのかもあわせて説明しましょう。

私はいつも以下のように説明しています。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

最後に公開鍵暗号方式がどのように使われるかを補足します。

公開鍵暗号方式は、通常、通信の最初の1回だけ使用され、その後は共通鍵暗号方式に切り替えて暗号化通信が行われます。

具体的に言うと、最初に公開鍵暗号方式を使って共通鍵を安全に交換します。
これにより、共通鍵が安全に相手に渡され、その後はこの共通鍵を使って共通鍵暗号方式でデータを暗号化します。

公開鍵暗号方式は暗号化の処理に時間がかかるため、効率よく通信するためには、処理が速い共通鍵暗号方式に切り替えるのが一般的です。この組み合わせによる方法を「ハイブリッド暗号方式」と呼びます。

公開鍵暗号方式はセキュリティの高い暗号化が求められる場面で用いられますが、通信が始まった後は効率を重視して共通鍵暗号方式に移行することで、スムーズで安全な通信が可能になります。

作成される鍵の数

次は公開鍵暗号化方式で必要になる鍵の数について解説しましょう。

公開鍵暗号化方式の利点として、必要になる鍵の数が少なく済むというメリットがあります。
なぜこのメリットが生まれるのか説明しましょう。その際、共通鍵暗号化方式の場合はどうなるか比較して説明するとなお分かりやすいです。

鍵の数の説明は公開鍵暗号化方式指導手順全体像の以下の赤枠部分です。

公開鍵暗号化方式指導手順全体像の作成される鍵の数の説明部分
公開鍵暗号化方式指導手順全体像の作成される鍵の数の説明部分

鍵の数についての説明は、私は普段以下のような形で説明しています。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

公開鍵暗号方式には、「必要な鍵の数が少なくなる」というメリットがあります。
これは、公開鍵を誰でも自由に公開できるため、鍵の管理がシンプルになるからです。

公開鍵暗号通信では、「自分の公開鍵」「自分の秘密鍵」「相手の公開鍵」「相手の秘密鍵」の4つの鍵を使用します。
そのため、必要な鍵の数は「(自分の鍵ペア1組 + 通信相手の数) × 2」となります。

共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式で、10人が相互に暗号通信を行う場合に必要な鍵の数を比較してみましょう。

共通鍵暗号方式では、10人がそれぞれ通信するためにペアごとの共通鍵が必要です。そのため、10人の中で全員が互いに通信する場合、45個の鍵が必要になります。

一方、公開鍵暗号方式では、各人が自分専用の鍵ペア(公開鍵と秘密鍵)を持つだけで済み、10人で合計20個の鍵(10組の鍵ペア)が必要になります。

このように、公開鍵暗号方式では共通鍵暗号方式に比べて必要な鍵の総数が少なく、管理が簡単になるという利点があります。

公開鍵暗号化方式において、4人がお互いに通信するのに必要になる鍵の数
公開鍵暗号化方式で4人がお互いに通信するのに必要になる鍵の数

アルゴリズム

次はアルゴリズムについて説明しましょう。
公開鍵暗号化方式に使用される代表的なアルゴリズムを3つほど紹介するくらいでよいと思います。

私がいつも説明の際に取り上げているのが、「RSA」「ECC」「DSA」の3つです。

なるべく身近でよく使用されるアルゴリズムを取り上げましょう。
身近で使用されているものであれば、Wi-Fi接続の際など実際に取り上げたアルゴリズムを目にする機会が多くなります。日常生活で実際に触れるとさらに理解が深まります。


アルゴリズムは公開鍵暗号化方式指導手順全体像の以下赤枠部分です。

公開鍵暗号化方式指導手順全体像のアルゴリズム説明部分
公開鍵暗号化方式指導手順全体像のアルゴリズム説明部分

私は普段以下のような形で説明しています。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

次にKeyペアを作成する際に選択したアルゴリズムについて、よく使用されるものを3つ取り上げて説明します。

1つ目は「RSA」、2つ目に「ECC」、3つ目に「DSA」です。

1つ目の「RSA」は公開鍵暗号化方式の中で最も有名な方法の一つです。
この方式では、2つの大きな素数を使って「公開鍵」と「秘密鍵」を作ります。公開鍵を使ってデータを暗号化し、それを解読するためには秘密鍵が必要です。

安全性が高く、長い歴史があるため信頼性も高いですが、計算量が多く、処理が重くなることがあります。そのため、大きなデータを扱うには時間がかかることがあります。

2つ目の「ECC」は、楕円曲線という数学的な仕組みを使って公開鍵と秘密鍵を作る暗号方式です。

RSAに比べて、短い鍵で高い安全性を得られることが大きな特徴です。これにより、処理が速く、メモリの使用量も少ないので、スマートフォンや小型のデバイスなど、リソースが限られている環境に適しています。

3つ目の「DSA」はデジタル署名を作成するための暗号アルゴリズムです。デジタル署名を使うことで、データが改ざんされていないことや、送信者が誰であるかを証明できます。

暗号化そのものではなく、データの信頼性を保証するために使われます。送られてきたデータが本当に正しい相手から送られてきたかどうかを確認するのに便利です。

まとめ
RSA:大きな素数を使う公開鍵暗号方式。安全だが処理が重い。
ECC:楕円曲線を使う方式。短い鍵で高い安全性を持ち、処理も速い。
DSA:デジタル署名を作るための方式。データの送信者確認や改ざん防止に使う。

公開暗号化方式の利用場面

最後に公開鍵暗号化方式の利用場面について説明しましょう。
身近な例を使うことで、聞き手は実際にその場面に出会ったときに、自分で理解しやすくなります。

利用場面の説明は公開鍵暗号化方式指導手順全体像の赤枠の部分です。

公開鍵暗号化方式指導手順全体像の身近な利用場面説明部分
公開鍵暗号化方式指導手順全体像の身近な利用場面説明部分

私はいつも以下のような形で説明しています。

先輩エンジニア
先輩エンジニア

公開鍵暗号化方式は、インターネットを安全に利用するために欠かせない技術です。具体的にどんな場面で使われているのか、次の3つのケースで説明します。

1つ目は「インターネット上で個人情報を送信する場面」です。
例えば、ネットショッピングをするとき、クレジットカード番号や住所などの個人情報を入力します。このとき、公開鍵暗号化方式があなたの情報を安全に守っています。

具体的には、次のような流れになります。

ウェブサイトは「公開鍵」をブラウザに送ります。ブラウザは、その公開鍵を使ってクレジットカード番号や住所などを暗号化します。こうすることで、通信途中で誰かに情報が盗まれたとしても、そのデータは暗号化されているため、内容が読めません。ウェブサイト側では、「秘密鍵」を使って暗号化されたデータを解読します。この秘密鍵はウェブサイトだけが持っており、これによってデータの安全性が確保されています。ウェブサイトからブラウザにデータを送るときはこの逆で、ウェブサイトが公開鍵でデータを暗号化し、ブラウザが秘密鍵で解読します。

2つ目が「電子メールの暗号化」です。
電子メールを送るとき、公開鍵暗号化方式を使うことで、そのメールの内容が第三者に見られないようにできます。たとえば、会社で機密情報を含むメールを送る場合、公開鍵暗号を使ってメールを暗号化することがあります。
具体的には、以下のような仕組みです。

メールの送信者は、相手(受信者)の「公開鍵」を使って、メールの内容を暗号化します。受信者は、自分だけが持つ「秘密鍵」を使って、その暗号化されたメールを復号します。こうすることで、受信者だけがメールの内容を読むことができ、他の人が盗み見しても内容はわかりません。
たとえば、Gmailなどでは、企業向けに「エンドツーエンド暗号化」といって、送信者と受信者の間の通信を暗号化して、安全に情報を届ける仕組みが提供されています。

3つ目が「デジタル署名」です。
デジタル署名は、紙にサインするのと同じように、電子的に自分の身元を証明するために使われます。たとえば、オンラインで契約書に署名をする場合などです。

送信者は、自分の「秘密鍵」を使って、電子文書にデジタル署名を付けます。この秘密鍵は自分だけが持っているもので、これによりその文書が確かに自分によるものであることを証明できます。
受信者は、その署名を検証するために送信者の「公開鍵」を使います。公開鍵を使うことで、文書が改ざんされていないか、またその署名が本当に送信者のものであるかを確認できます。

例えば、Adobe Acrobatを使ってPDFファイルに電子署名を加えるときや、政府のオンラインサービスで確定申告などを行うときに、このデジタル署名の仕組みが使われています。これにより、誰がその文書を作成したのか、そして途中で誰かが内容を変えていないかを確実に確認できます。

公開鍵暗号化方式の理解の重要性

公開鍵暗号化方式を理解することは、インターネットでの安全なやり取りだけにとどまらず、他のさまざまな領域の理解にもつながります。特に、デジタルセキュリティの基礎を学ぶことによって、暗号技術がどのように社会やビジネスの中で役立っているかをより広く理解できるようになります。

例えば、公開鍵暗号化方式を理解することで、「データ保護」の重要性やその方法に対する理解が深まります。結果、ネットワークセキュリティやクラウドセキュリティといったITセキュリティ全般への関心が広がります。どのようにしてデータを守り、誰がアクセスできるかを管理するかという観点から、組織でのセキュリティポリシーやコンプライアンスについても深く考えることができるようになります。

また、公開鍵暗号化方式は、ブロックチェーン技術にも応用されています。
ブロックチェーンはビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)で使われている技術で、取引の透明性と安全性を保つために暗号化技術が重要な役割を果たしています。
公開鍵と秘密鍵を使った仕組みを理解していることで、ブロックチェーンの基礎も理解しやすくなり、この新しい技術がどのように社会を変えていくかを見通す力がつくかもしれません。

このように、公開鍵暗号化方式の理解は、デジタルセキュリティ、ブロックチェーンなど、幅広い分野への理解につながります。現代社会はインターネットに依存している部分が多いため、こうした暗号技術の理解は、さまざまな領域で役立つ基礎となり、デジタル社会をより安全に生き抜く力を与えてくれると考えています。

公開鍵暗号化方式の理解の効果
・インターネット上の安全なやり取りの理解を深める。
・デジタルセキュリティの基礎を学ぶことで、暗号技術がどのように使用されているか理解できる。
データ保護への理解
・データ保護の重要性とその方法に対する理解が深まる。
・ネットワークセキュリティ、クラウドセキュリティなどのITセキュリティ全般への関心が広がる。
・セキュリティポリシーやコンプライアンスへの理解が深まる。
ブロックチェーン技術
・公開鍵暗号化方式の理解がブロックチェーン技術の基礎理解に役立つ。
・暗号技術がビットコインなどの暗号資産において果たす役割を理解し、取引の透明性と安全性の重要性を把握できる。
デジタル署名と電子署名技術
・デジタル署名の理解が、法律や契約における電子署名技術の理解につながる。
・オンラインでの契約手続きや公的申請を安全に行う方法を学ぶ。
・デジタル時代における法律やビジネスプロセスの変化に対する理解が深まる。
現代社会における暗号技術の重要性
・暗号技術の理解が、デジタル社会での安全性を高めるために役立つ。
・デジタル社会をより安全に生き抜くための基礎知識となる。
公開鍵暗号化方式を学ぶ重要性

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この記事を書いた人!

ゴリタン

インフラエンジニアとして、ネットワークとサーバーの運用・保守・構築・設計に幅広く携わり、
現在は大規模政府公共データの移行プロジェクトを担当。

CCNPやLPICレベル3、AWSセキュリティスペシャリストなどの資格を保有しています。